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麻雀のルーツを探って④

-麻雀の誕生と暴発的な伝播-

 清朝・咸豊年間にそれまで一世を風靡していた「馬吊」は寧波の文人陳魚門(チェンユイメン)によって整理再編された。 (理事 栗原道男)

 陳魚門(1817~1878)は、名は政鈅、号は仰楼といった。
 鄞城の人で幼少時から才知抜群だった。少年期には楊啓堂に英語を習い、道光29年(1849)に清朝の「貢士」となった。その後、功績が認められ、「内閣中書」に任命され、官職も「三品」に昇進した。陳氏は広く各界の人々と交友し、琴や酒の欠けた日はなく、大の遊び人であった。
 紙牌にも精通していた。同治三年(1846)に、紙牌を獣骨竹牌に変えた。そして、碰和牌の「萬」・「索」・「筒」の合計108枚をそのまま採用したうえで、花牌「紅花」・「白花」・「老千」を「紅中」・「白板」「緑發」に改名し、「三箭」(弓矢の矢・三本の矢の意)と名付け、それぞれ四枚、計12枚とした。

 当時、寧波は清国の対外貿易五港、随一の隆盛を誇っていた港湾都市であった。
 町には貿易商人や船員、漁民も多く、風向きは庶民の生活に深く密着していた。そんなことから、陳氏は風牌「東」・「南」・「西」・「北」四種、それぞれ四枚計16枚を増設し、ここに136枚の麻雀が完成したのである。

 [清稗類鈔・賭博類・叉麻雀]によれば「麻雀も葉子(紙牌)」の一種で麻雀を打つことを『叉麻雀』という。
 麻雀は瞬く間に全国の商店、家庭、業界会館などはもとより、旅館や酒場、妓楼にまで伝播されたと記載されている。
注:葉子は書物に注記や、書き込みを加える際に使用した木の葉(葉子)のような紙片のこと。紙牌がこの紙片に似ていたので通称「葉子」となった。

 太平天国の頃、陳魚門は「善後局」を主宰し、社会奉仕などの為に資金集めもしたが、その交際手段としても麻雀を活用した。陳は英国寧波総領事館の領事・夏福礼と親友になり、ときどき一緒に麻雀を楽しんだ。

 西洋で最初に麻雀が伝播した国は米国であった。安徽省出身の戈昆化(グオ クンフアー)は上海米国総領事館に二年間勤務した後、1865年に寧波に移住し、英国寧波総領事館に
 十五年間在籍した。この間、戈は寧波の陳魚門、陳励、章忻鋆など有名人と深く付き合った。
 彼は麻雀術に精通するだけではなく、唐時代から伝わるサイコロ遊戯(すごろく)の「戯擲昇官図」などの詩文も書いた多才な人物であった。
 その後、彼は、中国人初の教授としてハーバード大学で教鞭をとった。彼の伝授を通じて、麻雀はまず米国の知識人に広がり、ハーバード大学のキャンパスで大流行した。その結果、米国は西洋諸国の中で最も早く「全国麻雀連盟」が組織化された。

日本への伝播について、日本健康麻雀協会の普及本によると:

 明治41年日露戦争の翌々年、中国、雲南の師範学堂にいた、樺太の太白中学校教頭の奈川彦作が、麻雀牌一式を持ち帰り、帰国後同僚や学生たちに披露したのが、日本における最初の麻雀といわれている。その後、平山三郎は青島で習得した麻雀を日本に持ち帰り、大正13年に東京の芝で麻雀教示所「南南倶楽部」を開設、これが日本で最初の営業店になったといわれている。

 青島帰りの空閑(くが)緑は、昭和二年、四谷に会員制倶楽部「東京麻雀会」開設した。この年、平山は銀座にも進出し、麻雀クラブ「南山荘」を開設し、麻雀の営業面での定着に尽力した。一方空閑は麻雀を競技として考え、競技者の組織化に尽力した。
 当時、神楽坂の「カフェ・ランタン」が東京の麻雀愛好家のメッカで、文士の菊池寛、久米正雄や洋画家の松山省三、松竹女優の松井千枝子らが常連であった。

 大正末期から昭和初期にかけ、鎌倉在住の文士たちの間で麻雀が盛んに行われた。日本への麻雀の伝播は、上海、青島、大連など中国ルートと米国等からがあり、ルールも各グループ毎にまちまちで、統一されていなかった。鎌倉文士の中でも、久米正雄は大変熱心な麻雀愛好家、研究家であった。彼らは、鎌倉駅裏口にあった「星月倶楽部」を根拠地にして、仲間たちと競技規則の検討、ルールの改正、打法の研究など行った。そして、彼らの考えを基に昭和四年に「日本麻雀連盟」が設立された。
 初代総裁に菊池寛が就任、二代目に久米正雄が就任した。昭和七年には会員数が早くも二十数万人に急増したが、戦時中には一時的に衰退した。

 昭和40年代頃から爆発的なブームが到来したが、バブル崩壊と共に下火になった。昨今では、定年退職者などを中心に、健康麻雀ブームが始まっている。
 また、日本麻雀連盟などは普及策として、女流プロ(二階堂姉妹、黒沢咲,和泉由希子、米国人ジヨオンなどの美人プロ)も育成し、若い女性の間でも静かなブームが始まっている。

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