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「復興構想会議」への期待

 4月14日に、東日本大震災の被災地復興計画を検討する「復興構想会議」の初会合が開かれた。管首相の当初の方針は、福島第一原子力発電所事故は構想会議の検討対象とはしない考えであったようだが、委員から今回の災害は、地震、津波、原発事故の三つの災害であるという強い意見があり、原発事故の問題も含めて検討することになったようだ。これは当然のことと思われるが、ただ、地震と津波で壊滅的な状況にある地域の復興計画と原発事故の影響を受けている地域の復興計画では、その内容はかなり異なるものとなろう。日常生活や子供の教育環境の再建、雇用問題の解決や企業活動の再建等ソフト面では共通する点は多くあるだろう。また、原発事故の影響地域の復興計画は、原発事故がいつ頃、どのような形で収束するか、収束後、住民は元の地域に戻れるのか戻れないのかによっても、計画の内容は大きく異なってくるだろう。 (理事 福島 一)

 管首相は4月1日の記者会見で、「従来(の姿)に戻すという『復旧』を超えて、素晴らしい東北、日本を作っていくという大きな意味をもった復興計画を進めたい」(4月2日世売新聞)、さらに、「山を削って高台に住む所を置き、海岸沿いの水産業、漁港までは通勤」するといった構想も述べたらしい。ところで、「復興構想会議」ではどのようなレベルの内容の構想を論議するのだろうか。
第一の問題は、今回の被災地が、南北約450km、青森、岩手、宮城、福島、茨木、千葉の6県にも亘ることである。構想会議の委員が、これだけ広い地域について、個々の被災地の状況を短時間で全て把握することは、難しいだろうと思われる。個々の被災地域の復興計画の策定は、個々の地域に任せる必要がある。集団で高台に移住し海岸の職場に通勤する職住分離型を選択する地域、海の近くに高層で大津波にも耐えられる堅牢なビルを建て職住一体型でという地域、あるいは、防波堤を再建し高台への避難路を確保することを選ぶ地域等々、それぞれの地域によって異なってこよう。したがって、構想会議では一つの青写真、復興マスタープランを示しても意味がない。いくつかの代替的な案を事例的に示す程度であろう。重要なのは、被災地域の復興計画の策定を人的・資金的にサポートする仕組みを早急に作ることである。地域の復興計画は地域で作ることを原則とし、それを技術的にサポートするための仕組み、例えば、地震や津波対策の専門家や建築家・土木コンサルタント等を派遣する仕組み、大学等との協力体制、あるいは、デベロッパーやゼネコンなど民間企業の知恵を活用する仕組み等が必要となってこよう。仮設住宅の居住期限や避難地域での生活を考慮すると、極めて短期間に実行可能なプランを作らなければならないだろう。とても被災地域の住民、行政、企業などだけの力では不足すると思われる。
第二には、大震災により地盤沈下した地域の土地の再生の問題である。どのような方法とプロセスで、再び個人や企業が利用可能な土地とするか、その方策を示す必要があるのではないだろうか。津波による浸水地域は山手線内側の面積の8倍以上になるらしい。国土地理院の調査では、陸前高田84センチ、石巻78センチ、気仙沼74センチ、大船渡73センチ、南三陸町69センチ、釜石66センチも土地が沈下しており、大潮の時は、大人の腰のあたりまで海水に浸る地域もあるそうである。地震と津波により、そのままでは利用できない膨大な土地が生まれている。これらの土地を従来通りの日常生活の場として、企業活動の場として、個人があるいは企業が自力で再生するのは恐らく不可能である。また、土地の形状や位置の変化もあると思われるので、土地所有者等の権利調整についての考え方、再生から利用に至るプロセス等についても方策を提示する必要があるだろう。原発事故の影響地域についても、その収束次第では同様の問題が発生する可能性があると考えられる。
第三に、膨大な瓦礫の処理の問題がある。個々の被災地域や県では処理しきれない量の瓦礫が発生している。上記の地盤沈下地域の問題と同様に、瓦礫の処理が進まないと復興計画実施の障害になる可能性が大きい。法律上は、災害による廃棄物は市町村が処理し、後に国が補助金を支給するとのことだが、この方法では今回の大災害の瓦礫の処理は進まないだろう。構想会議で新たな仕組みの提案が必要と思われる。
大震災の復興費用は、民間の研究機関等の予測によれば、原発事故を除いて15~20兆円程度と見られている。その財源については、「復興再生債」の発行とか消費税1%分を復興財源に向けるなど種々のアイディアが出されているが、最終的には何らかの増税で賄うことになるだろう。構想会議には、関係機関とある程度調整の上で、復興計画のスケジュールに対応した復興財源創出のロードマップを提示して欲しいと思っている。
以上の通り、構想会議に期待するのは、ます被災地域の復興計画を早急に作成するための支援策であり、そして復興計画を実施する段階では、被災した地域の自治体や県レベルでは対応できない障害を取り除く仕組みの提案である。期間限定、地域限定で超法規的な措置も必要となろう。構想会議が具体的な青写真、復興のマスタープランを提案する必要はない、具体的なマスタープランは被災地域が描くべきであると思う。それを実現するための、制度、体制、財源等の仕組みづくりを構想会議には期待したい。

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