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復旧・復興・創生①(東日本大震災に思う④)

「もう」と云うべきか「まだ」と云うべきか。3月11日の未曾有の地震津波の大災害から3週間が経った。本来なら一応の落ち着きを取り戻す時期なのに、東京電力福島第一原子力発電所の事故が重なり、今だ云い知れない不安感が蔓延している。想定をはるかに超す天災の故なのか、備えを怠っていた人災によるものなのか、それとも初期動作に誤りがあったのか、将来のためにも、いずれ厳格に検証されなければならないが、いらざる倦怠感・厭世感をもたらした罪は大きい。 (理事 早川成信)

 とは云え、救済の段階はほぼ終了し、これから復旧の段階に入らなければならない。救済の時期は「命」の確保が第一、被災者の方々の気持ちも安堵感と虚脱感で精一杯だったろう。しかし落ち着きを取り戻すに従い「生活」への不安に苛まれているのではないだろうか。「生活」すなわち「生活の場」と「生活の糧」への不安である。為政者はその不安をいち早く取り除かなければならない。人は将来への展望が開かれなければ生きていけない。

 今回の大災害は16年前の阪神淡路大震災に比べて、復旧は数倍困難を伴うだろう。第一に被災地の広さ。太平洋岸500キロに及ぶ広範囲、しかも被災地は分散されている。仮設住宅・電気・水道・下水などのライフライン、道路・鉄道・学校・病院・廃棄物処理所などのインフラ復旧は大作業だ。
 第二に地域行政機能が崩壊してしまったこと。戸籍原本・土地台帳などの書類が流出してしまった所が多々あると聞く。権利関係をめぐるトラブルが頻発しなければ良いが。
 第三に職場の崩壊。16年前の第災害の時は、神戸在住ながら被害が少なかった大阪に勤務していた方々が多かったと聞く。今回は職住近接の地域である。特に頭が痛いのは、この地域の主たる産業が農業・水産業であること。農地の多くが海水をかぶり塩害が懸念される。港湾の破壊とともに漁船の多くが破損した。三陸海岸のカキ養殖場は長年にわたる林野の整備によって地味豊かな海水に満ちた上質なものになった。これらの復旧には長期間を要するだろう。工場の復旧にはそう長期間を要しまいが、これまで農業・漁業に従事していた方々がすぐに工場従業員に転換できると考えるのは安易であろう。
 第四は地域コミュニティ。この地域は地域・地域ごとの強い絆で結びあっている。高齢化率が3割を超える地域もある。この絆を壊すことは、被災者の将来への展望を壊すことでもある。
 第五に原子力発電所の問題は更に深刻だ。周辺地域をどう復旧していくのか、全く展望が開けない。

 恐らく復旧には6~12ケ月を要するだろう。その際、重要なことが二つある。復旧後4~5年をかけて本格的な復興の段階に進む。本格的な住居建設はもとより、リスク分散(特に近い将来襲来が予想されている東海地震・東南海地震・南海地震への備えと首都機能の分散)・高齢化社会に見合う都市計画・医療システム・国際競争力ある農業・漁業の再生など、広範囲に及ぶ、また、非被災地を含めた、新しい国土再設計を考えなければならない。そのグランド・デザインの骨子だけでも早急に作り上げることが第一である。第二は、復旧もできるだけその復興計画に沿う形で行うことだ。なし崩しで行えば、今日の東京のような姿になってしまう。各地域の「部分最適」と今後の復興計画との整合性を保った「全体最適」の双方を実現することも重要だ。大変難しいことだが、それが達成できなければ、1000年に一度の大地震大津波は一体何だったのだろうということになってしまう。

 復旧・復興には多額の資金を要しよう。被災総額は16~25兆円と推計されているが、原子力発電所事故による被害を加えれば更に膨らむ。復旧・復興には40~60兆円程度がかかるとの予想もあるが、問題は、その資金をどう捻出するかだ。
民間企業であれば、まず不急の支出を抑える。子供手当・農家個別保障・高速道路無料化・高校生授業料無料化の4Kの凍結は当然として更なる歳出抑制で、年4兆円程度、5年間とすれば20兆円程度の資金が捻出される計算だ。民間企業であれば不要不急の資産を売却する。不動産の処分、民営化企業の政府保有分のみならず、民営化可能企業(例えば郵政事業)の売却によって10兆円以上は確保できよう。民間企業であれば人員削減も最後の手段として行う。国会議員数削減・国家公務員数削減、報酬カットなども当然検討されるハズである。これで1~3兆円、2~3年後に行われるとして2年間で5兆円程度の資金確保が可能だ。
 また、竹中平蔵氏によれば、国債整理基金には、毎年度の償還と一般会計からの繰り入れの差額が積み上がった基金残高は12兆4652億円(09年度決算)ある、禁じ手に近いが、その取り崩しを行っても良いのではないかという。(なお、財務省のホーム・ページを見ると、国債整理基金特別会計に関する事項は、何故か最近になって削除されている)

 それでも足りなければ収入を増やすしかない。増税だ。国民はそれを納得する。ただ、上記のような政府で出来る努力を行わず、安易な増収策に終始するなら、せっかくの「第三の改革のチャンス」(明治維新・第二次大戦終戦・今回の大災害)を逃すことになる。今、国の在り方が問われている。

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