この度の東北地方太平洋沖地震により被害を受けられました皆さまに心よりお見舞い申し上げます。
日本の観測史上類のない大地震、1000年に一度という大津波によって多くの人々が命や住む家を失った。痛ましいことだ。そうした中、余震の危険を感じながらも、懸命に救助活動をされている役所・消防団・警察・自衛隊の皆様に感謝と敬意を称したい。海外からの支援・義援活動も活発と聞く。改めて「世界の中の日本」を認識されられた。救援募金活動も動き出し、状況が落ち着き次第ボランティア活動も活発になるだろう。企業も資材の提供や救済資金の提供に乗り出した。有り難いことだ。
そこで私は企業にもう一歩踏み込んだ支援をお願いしたい。配当金の全額ないし一部を一時的に復興資金に回してもらえないか、減配・無配としてその資金を復興資金として活用することを株主に訴えてもらえないか、ということである。(理事 早川成信)
今回の災害は甚大で、大規模・広範囲に及ぶ。その復興には数年以上の期間と場合によっては数十兆円の資金が必要となろう。その資金手当てとして財政上は子育て支援・農家個別保障・高速道路無料化などの見直しのみならず全ての歳出項目での削減が必要であろう。それでなくとも膨大な財政赤字・公的債務は更に悪化するのは必至であろうが、それは致し方ない。そこで、企業も何か貢献できないか、ということが私の願いである。
日経新聞予想によれば、2010年度の上場企業の配当総額は5兆円強、自社株買いを含めれば6.5兆円とのことである。その一部が復興資金に回れば、大きな助けとなる。さらに極論すれば、現在の配当性向(配当/利益)は30~40%と思われるが、最低必要内部留保を越える分の一部も復興資金として活用することも検討してもらいたい。
云うまでもなく、配当は、企業の血のにじむ努力によって生みだした利益を、資金の提供者である株主に還元・配分するものである。そして株主とは「リスクを覚悟して資金を投資した人々」である。株主は「投資した資金がなくなるか、減少するか、あるいは投資利回りが低くなることを覚悟」して「上手くいけば高いリターンが得られることを期待」して資金を提供した人々である。配当金を一時的に放棄しても「覚悟したリスクの許容範囲」ではないだろうか。
おそらく個人投資家の多くは賛同してくれるだろう。外人投資家・機関投資家の中には「受託者責任」の観点から反対するものもあるだろう。しかし、企業は社会的存在であり、企業の社会貢献を強く求めているのも彼らである。ここは、強く説得してもらいたいものだ。
グリード・キャピタリズム(強欲資本主義)と云われ、資本主義の意義を懸念視するムキも増えている。しかし、資本主義は人類が生み出した最も効率的経済システムである。その原点はピープルズ・キャピタリズム(大衆資本主義)のハズである。
今こそピープルズ・キャピタリズムの本領を発揮してもらいたいものである。