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今年の株主総会

 3月決算の株主総会も終わった。今年は数年ぶりにいくつかの話題会社の株主総会に出席した。新聞・雑誌記事、ネット情報、各社の招集通知状等を参考にしながら、今年の株主総会を総括してみた。
(理事 村瀬光正)

 出席株主が1000名を超える総会は今ではそう珍しくなくなった。
熱心に質問する個人株主は年々増加している。今年の総会のハイライトは、「株主満足度」と「ガバナンスのあり方」であった。
 リーマンショックから立ち直り、会社業績は大幅に回復したが、株主還元(配当、自社株購入)、株価に対する株主の満足度は必ずしも高くなく、高額の役員報酬、ストックオプションなどに関する厳しい質問が相次いだ。質問をめぐり、株主との激しいやり取りも一部に見られたが、全体としてはさしたる混乱もなく、質疑を通じて、会社と株主の相互理解は深まったように感じた。決議案の採決も表面的には順調に行なわれた。
 来年の総会では、株主の期待に対して、経営がどう応えたかが再び問われることになろう。わが社の株価は安すぎる、株価のことは市場に聞いて欲しいという通り一遍の答えだけでは株主は満足しない。
 株主は(1株当りの)株式価値を真に高める経営を強く望んでいる。また、今年から独立役員制の導入、1億円以上の役員報酬や議決権行使状況の開示が行なわれようになったが、「ガバナンスのあり方」についても、株主の目は一層厳しくなってくるように思う。
 以下、今年の総会の注目点を整理した。

1.新たな情報開示(総会の透明度向上)とガバナンスの強化  
  ・役員報酬年1億円以上の個別開示義務(有価証券報告書)。
   先行して総会でも開示。業績・株価水準と高額報酬の整合性、
   高額報酬の決定プロセスについて株主の関心が高まる
  ・議決権行使結果の開示(関東財務局に臨時報告書提出)。
   開示は総会後だが、個別議案(取締役・監査役については個人別)の賛成、
   反対の集計結果が開示され、行使結果の透明性が高まる。
  ・招集通知を総会前に東証のWebで開示。
   株主でなくても広く閲覧可能になった。

  ・独立役員の選任 今年3月末までに東証に届出済み。
   適当な社外役員がいない場合には、6月の株主総会で選任。 
   (例プロネクサス 3月末までに3人の社外監査役を独立役員として届出済み、
   新たに6月総会で社外取締役を1名選任、独立役員に追加する      
2.総会時間 長時間化。かつては30分、いまは1時間以上が常態化。
  2時間超も珍しくない。(例)第一生命2時間48分         
3.出席者数 出席株主最多 エイベックスグループH11,000名
  会場 さいたまスーパーアリーナ  総会(11:00~12:30)
  その後、人気歌手のライブを開催、終了15:20
  第一生命 株主数日本最多 137万名出席株主3096名
4.主役は機関投資家・個人株主 
  プロ(総会屋)→国内外の機関投資家→個人株主
「賛成」・「議事進行」の連呼、悪質な野次、怒号の時代から、 
  質疑を通して経営陣と個人株主が相互理解を深める時代へ。
  外国・国内機関投資家(投信、生保、年金、ファンド等)は議決
  権行使により意見を表明。議決権行使助言会社の存在感高まる。
5.会場 本社ホール、ホテル、国際会議場、アリーナ等で数千人対応。
  第一生命は幕張メッセ国際展示場で開催
6.日程 集中日の分散化は更に進展。東証上場3月決算会社1,741社
  最も集中したのは、6月29日(火)742社(42.6%)
  昨年は6月26日(金)876社(49.3%) 
  因みに、ピークは H7年6月 96.2%
7.報告事項 一般的には、議長が報告。事業報告は映像(スクリーン)
  を利用するケースが多い。ナレーターが議長に代わって説明する
  会社もある。確かに聞きやすいが、心に響かない。
  株主は議長(=社長)の生の声を聞きたいのではないか。
8.決議事項 ①剰余金の処分(期末配当)、②取締役・監査役選任
  ③定款の一部変更、④取締役賞与支給、⑤ストックオプション
  その他買収防衛策(継続、更新、廃止)、資本準備金の額の減少等。
  何事もなければ、議案の採決そのものは数分で終わる。
  会社法(2006年施行)により会社運営の自由度が高まり、総会の
  議案は年々減少する方向にある。決議議案が取締役・監査役の選
  任のみという会社もいくつかあった。株主の最大関心事の一つは
  配当だが、取締役の任期を1年にして、配当についても取締役会
  で決める会社が増えてきている(定款変更が必要)。
9.総会の運営 報告、議案説明、そして質疑という手順が一般的。
  すべての議案を一括して上程し、審議するいわゆる「一括上程方
  式」による総会運営が完全に定着。質疑の時間は長引く傾向にあ
  るが、採決は極めて短時間に行なわれる。混乱を避けるために質
  問整理券発行するなど新手法も登場。熱心に質問する個人株主が
  年々増加している。総会屋は姿を消した。      
10.株主提案 大幅に減少 
  ・東芝 第3号~11号議案 株主提案(株主1名からの提案) 
   3年連続、招集通知12~26ページにわたる。違反行為に関する
   事実関係の開示、役員処分内容の開示等
  ・HOYA 創業者一族の関係者が15の議案を提出
11.質問事項 役員の高額報酬、業績、中期計画、グローバル戦略
  (特に中国)、新規事業、株主還元策、株価不振、経営責任の追及。 
  質問に対して議長は直接答えず、担当役員に振る方式が一般的。
12.総会をウエブサイトに公開 出席株主以外の株主・投資家への対応。
   通常総会への出席者は株主総数の1%以下、遠方の株主は出席し
   たくても会場に来れないし、また年々増加する高齢者も出席でき
   ない方が多い。総会は出席者だけのものではない。個人株主説明
   会も大事だが、真に開かれた総会を目指すのであれば、決議通知
   だけではなく、総会全体を株主に開示すべきだろう。インターネ
   ットを活用する会社も一部にあるが、まだ少ない。
  ・豊田通商 インターネットで生中継 数年前から
  ・ソニー 株主のみが見られるウェブサイトで今年初めて生中継
   (従来は翌日以降に公開)
  ・ドコモ 冒頭から終了までの模様をウエブサイトで一般公開、
   質問については、テキストにて公開(後日オンデマンドで配信)
  ・サイボウズ(4月総会)総会を動画サイトで今年初めて中継
13.総会を企業広報として位置づける  総会終了後に、事業報告会、
  株主懇親会、製品・サービス展示会等を行なう会社は近年増加
  している。

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