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主要企業の株主配当状況(その3)

戦い済んで、日が暮れて(バブルはじけて、不況来て) ・・・・・
朝の来ない夜はない、しかし朝は何時来るのか、どんな朝になるのか、夜をどう過ごし、朝にどう備えるのか。今回の世界的金融危機の中で迎えた前年度決算の株主配当の特徴的な動きをまとめると以下の通り。
                                                (理事  村瀬 光正)

1.近年、一定の配当性向を基準に配当を決める(業績連動主義)傾向が強まつているが、前期決算で  は業績が大幅に低下したり、赤字になつた企業の多くは、期末配当をどうするかギリギリまで決めか ねていた。
2.前年度決算の業績は前半高水準持続、後半急悪化したため、配当性向基準では上半期配当と期  末配当が大きくぶれることになるが、経営者心理として大幅な減配や無配への抵抗はやはり大き   い。
3.期末配当を見送つた企業の多くは上半期に配当をしているので、年間では株主に配当したことにな るわけだが、今年度の配当をどうするかについては、合理的な業績予想ができないということもあつ  て、短信発表時点ではまだ答えを用意していない企業が多い。
4.決算短信に今年度の業績予想数字を記入している企業でも、配当については未定とする企業が多  い。利益分配に関する基本方針を変えるのか、変えないのか不明確なままである。6月の株主総会 が注目される。
5.引続きこの上半期の配当をどうするのか、半年後には決断を迫られる。現状をどう認識し、次の局面 をどう想定するのか。経営者はこの答えを何時株主に提示できるのか。大幅赤字の中で、配当を継  続することの正当性を問われている。
6.配当利回りが国債の利回りを上回つていることもあつて、企業の利益分配に対する株主、投資家の 関心はこれまでになく高い。前年度決算で、大幅減益もしくは巨額赤字計上にもかかわらず、増配し たり、配当を継続した企業への株式市場での反応は様々だが、総じて厳しいものがあつたように思  う。
7.利益分配の方針等を変更した企業もかなりあつた。異常時における緊急避難的なものか基本方針  の変更なのか不明確な企業が多い。以下のような事例があつた。
 ① 配当性向の弾力的な運用を行なう
 ② 配当性向の水準を高める
 ③自社株の取得規模を減らし、株主配当に軸足を置く
 ④自社株取得を一時中断、手元資金の確保を優先する
 ⑤DOE(株主資本配当率)をベースとした考え方を改める
 ⑥DOEを基本方針とするが、当面は経営の健全性を最優先させる
 ⑦キャッシユフローを考慮して株主配当を決める
 ⑧配当回数年4回を改め、原則年2回にする
 ⑨期末株主配当については取締役会決議から株主総会決議事項に変更する
 ⑩賃金カットを実施しているので、株主にも相応の負担を求める
 ⑪短信に今年度の利益予想を出しているが、配当については「配当に関する基本方針に変更はない  ものの、今後の事業環境が不透明であることから未定」とする企業がかなりある。
8.前年度2000億以上の巨額赤字を計上した企業は25社にのぼる。その内、期末配当を見送つた企業 は7社(日立製作所、野村H,東芝、日本電気、あおぞら銀行、日産自動車、札幌北洋銀行)である。日 本電気、あおぞら銀行、札幌北洋銀行の3社は中間、期末とも無配である。日立、野村、東芝、日産 は代表的グローバル企業であり、外人株主も多い。期末配当の見送りは苦渋の選択だつたであろ  う。
 しかし、下半期は巨額の赤字であり、配当見送りは止むを得ない決断だろう。むしろ問題は今年度の 配当をどうするかである。短信では、4社の内、日立、東芝、日産は今年度も最終損益は赤字予想で あり、配当については、日立、東芝は未定、日産は無配の予想である。日立が本決算ベースで上場 以来初の無配となるか新経営陣の経営判断が注目される。野村は利益・配当予想ともに出していな い。
 一方、期末配当を実施した企業は8社(みずほFG, トヨタ自動車、パナソニック、三井住友FG,武富   士、三菱UFJFG、新日本石油、第一三共)である。次期配当に対する経営のメッセージは各社各様  である。三つの事例を示す。
 ① トヨタは昨年11月6日に中間決算を発表、純利益4934億円を計上、65円配当を実施した。短信で  は、通期予想は純利益5500億円、期末配当未定とした。通期実績は4369億円の赤字計上、した   がつて下半期の赤字は9303億円に達したことになる。1兆円近い赤字を出しながら、期末配当35   円、年配当100円を実施する。年間の配当金は3135億円になる。配当は定款上取締役会決議な   がら、期末配当は株主総会に諮る。短信では、次期も5500億円の巨額赤字予定であり、配当は未  定としている。
 ② パナソニックは昨年10月28日に中間決算を発表、純利益1284億円を計上、22.5円配当を実施し  た。短信では、通期予想は純利益3100億円、期末配当22.5円とした。通期実績は3789億円の赤  字計上、下半期の赤字は5073億円であつた。期末配当は上半期比大幅減配の7.5円である。短   信では、次期も1950億円の赤字予想になつているが、配当予想は10円とした。無配は避けたいと  いう経営の意思表示であろう。
 ③ 第一三共は昨年10月30日に中間決算を発表、純利益339億円、40円配当であつた。短信では、  通期純利益は650億円、期末配当40円予想とした。通期実績は3358億円の赤字(その後2155億   円赤字に修正)であつたが、期末配当は中間決算で発表した40円を実施する。昨年買収したインド  の製薬会社の株式評価損という一時的な要因での巨額赤字ということで公約通り年80円配当をお  こなうわけだが、結果的には巨額赤字ながら増配(2007年度70円配当)ということになる。短信で   は、次期予想は営業利益960億円(前期比9%増益)、純利益400億円、配当60円である。業績と配  当のねじれ現象が見られる。株価の反応はあまり良くない。

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