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主要企業の株主配当状況

 先週末時点で3月期本決算の上場企業のほぼ四分の1の会社が決算発表を行なった。日経によると、途中集計では6.4%減収で、61.8%経常減益、83.3%税引減益と予想通り厳しい決算となっている。今年度については、19.8%経常減益、59.5%税引増益の予想である。
                                             (理事   村瀬 光正)

 2008年度の配当については、前半期は業績も比較的堅調に推移した企業が多く、配当も高水準を維持したが、後半に入り業況が急激に悪化、期末の配当を大幅に引下げたり、見送る動きが広がった。
 日経予想では前年度の配当総額は53,200億円と13%減少する見込みである。前半の配当がものを言って、配当金額の減少は利益の減少幅に比べれば比較的小幅にとどまる見込みだ(配当性向は上昇)。
 問題は今年度である。先行き不透明ということで、いまのところ決算短信では2009年度の配当を「未定」としている企業が多い。2010年度以降の業績見通し次第だが、近年配当性向(業績連動)を重視する企業が増えているだけに、減配幅が大きくなる可能性は高い。

 配当に関して、決算短信等から特徴的な動きを見ると、
 1.昨年秋の中間決算発表時の公約にしばられ、ぎりぎりまで期末配当をどうするか決めかねた企業が多い
 2.公表してきた株主配当の基本方針を変更した企業は少ない --- 野村證券
 3.大幅減益決算ながら、これまでの安定配当を継続した ---  日通、ジャフコ、京セラ
 4.下半期に巨額の赤字を出したが、期末配当を行なった ---  トヨタ
 5.中間配当(または前年度期末配当)を増配したため、結果的には減益決算ながら通年では増配になった                                --- 日本電産、信越化学、野村総研
 6.中間配当を増配したが、期末減配して年配当は据置 --- TDK
 7.中間配当は行ったが、期末減無配で年配当は大幅減配 --- 新日鉄、デンソー、シャープ、東芝、アドバンテスト
 8.配当性向一定の方針を継続 --- 三菱商事、ファナック       
 9.株主資本配当率(DOE)を基本方針とするが、当面は経営の健全性を最優先させる                                                    --- オリックス 
 10.キャッシュフローを重視、巨額赤字ながら予定通り増配  --- 第一三共(予定) 
 11.自社株買いを一時中断、手元資金確保を優先 --- トヨタ
 12.同じ業界の大手2社間で配当格差が出た --- コマツ‐日立建機、新日鉄‐JFE、三井物産‐三菱商事、郵船‐商船三井   
 13.中には増配企業もあった --- 任天堂、ユニチャーム、ヤフー、日本たばこ、オリエンタルランド、NTTドコモ(次期増配予想)
 14.今年度配当を未定とする企業が続出

      
<具体事例>

・野村證券
   2008年度 58%減収、純損失 7094億円
           配当 25.5円 (前年度 34円) DOE 3.1%
           第4四半期は,連結業績が損失になったことを踏まえ,期末配当は見送り
   2009年度 業績予想、配当予想は短信に記載せず

利益分配方針(短信記載)
    「配当につきましては、株主資本配当率(DOE)3%をベースとして基準配当額(配当の下限水準)を決定するとともに、一定の経営成績が得られた場合は、・・・配当性向が30%以上となるように利益還元を行なってまいりました。  (中略)
H22年3月期の配当については、DOEをベースとした考え方を改め、連結配当性向30%以上を重要な指標の一つとして、安定的な支払いに努めます。また、配当回数は年4回を改め、原則年2回の支払いといたします。」

・トヨタ自動車
   2008年度 純損失 4369億円(前年度純利益17178億円)  
           配当 100円 (中間65円、期末35円) 
           前年度配当 140円(中間65円、期末75円)
   2009年度 純損失 5500億円予想
           配当 短信に記載無し(日経予想 年60円)
   短信に、「定款上、配当は取締役会決議で可能だが、株主の意向を直接伺う機会を確保するため、期末配当は総会決議事項としました」とある。
日経予想配当は60円だが、5500億円の赤字を出して、本当に60円配当できるのか、するのか。
前年度は下半期に9300億円の赤字を出して、35円配当をしたが・・・。今年度は、先が見えなければ相当重い決断になろう。なお、「自己株式取得は手元資金の確保を最優先として、控えました。今後も当面は見送る方針です」との記述あり。

・信越化学
    2008年度 純利益 1547億円  前年度比16%減益
            配当 100円 (中間、期末 各50円) 
            前年度配当90円(中間40円、期末50円) 10円増配
    2009年度 短信に予想の記載無し
    「現時点では、適切な年間予想値を算出することは極めて困難であると判断し・・・、未定といたします」


・日本電産
    2008年度 16%減収、純利益 283億円(前年度比31%減益)
            配当 60円 5円増配
    2009年度 10%減収、連結純益 270億円(5%減益)
            配当 50円 10円減配 
            賃金カットを実施、株主にも相応の負担を求める  


・東芝
    2008年度 純損失 3435億円
            配当 5円(中間5円、期末0)
    2009年度 500億円の純損失予想
            配当 空欄 
    「現時点での配当予想は行なっておりません」との記載あり

・シャープ
    2008年度 純損失 1258億円
            配当 21円(中間14円、期末7円)  前年度28円
    2009年度 経常利益 (-)200億円 、純利益 30億円予想
            配当 記載無し
    注記に「現時点では未定であります」

・新日鉄
    2008年度 純利益1550億円 56%減益
            配当 6円 (中間5円、期末1円)  前年度 11円
    2009年度 純利益 ゼロ
    配当 短信に記載なし

・オリックス
    2008年度 純利益 219億円 87%減益
            配当 70円  減配 (前年度 260円)
    2009年度 純利益 300億円予想
            配当 数値の記載無し
    短信に、「昨年、DOEで2%程度を目安としていたが、当面の間、経営の健全性の向上を最優先とした配当政策とします」と記載

・日本郵船 
    2008年度 純利益 561億円 51%減益
            配当 15円 (中間13円、期末2円)
            前年度配当 24円 (中間、期末 各12円)
    2009年度 純利益 180億円予想
            配当 4円(中間、期末 各2円) 配当性向27.3%
     参考:日経四季報(新春号) 2008年度 純利益 1400億円、配当 年26円予想

・商船三井
    2008年度 純利益 1270億円 33%減益
            配当 31円 (中間、期末各15.5円) 据置
            配当方針 「配当性向20%を目安に行なう」
            2008年度 配当性向 29.2%
    2009年度 純利益 400億円予想
            配当 短信には「次期の配当は未定です」と記載

・TDK
2008年度 16%減収、純損失 631億円 
            配当 130円 (中間70円、期末60円)
            前年度比 年間配当は据置ながら、期末配当を減額
    2009年度 純利益 52億円予想
            配当 短信に予想の記載無し(日経予想10~50円)
    「次期配当については、配当に関する基本方針に変更はないものの、今後の事業環境が不透明であることから、未定とさせていただきます」、なお、基本方針は「連結ベースのROEやDOEの水準、事業環境の変化等を勘案して、配当を行なう」

・ユニチャーム
    2008年度 3%増収、純利益 171億円 3%増益
            配当 54円 (前年度46円) 配当性向20.1%
    2009年度 純利益 200億円 17%増益予想
            配当 64円  配当性向 20.4%

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