ホーム > パートナーズ・ブログ >

コッター教授が勧める「変革の核心」

 100年に一度ともいわれる未曾有の経済危機の中、企業は収益力の回復に邁進している。しかし、報道等で知る限りでは、トップが叱咤・号令している割には「全社一丸」とはなっていないように感じられる。この4~5年、経済状況良好の中、業績が順調に推移してきただけに、経営陣がやろうとしていることが「何故必要なのか」の意識が、組織の末端までに行き渡っていないようである。今、企業がやらなければならないのは、単にコストを削減したり、工場を閉鎖したり、従業員を削減することではない。正に、会社を変えること、すなわち「企業変革」である。変革を成功させるのは非常に難しく、会社の隅々まで 「行動を変え」、それを「定着」させなければならない。
                                                 (理事 早川成信)

 リーダーシップ論の第一人者ジョン・コッター教授は「企業変革」についても優れた著作を著わしている。「企業変革力」(2002年 日経BP)、「企業変革ノート」(2003年 日経BP)で説かれた彼の企業変革に成功する秘訣を、以下要約する。

①大原則・・・「見て 感じて 変化する」流れを作る

 行動を変えるには、分析の結果を示して 「理性に訴える」より、目に見える形で真実を示して 「感情に訴える」ことが重要である。
 変革に成功した例をみると、変革のどの段階においても、公式のデータ収集や分析、報告書の作成などを中心に据えてはいない。何が問題で、その問題をいかに解決するかを「見せる」ことに重きをおく
そもそも、分析には少なくとも3つの限界がある。

 ●大きな真理を発見するのに分析はいらない・・・それほど手間をかけなくとも判る。
 ●激動する世界では、分析的手法は通用しにくい・・・将来が不透明である場合は特に。
 ●優れた分析を見たからと言って、俄然やる気になることはない。

②変革への8つのステップ

第一段階 ・・・危機意識を高める

 ●危機意識を高め、問題や機会を「何とかしなければ」という話し合いが始まるようにする。
 ●多く(出来れば全社)の関係者が危機意識(抽象的ではダメ)を共有しなければならない。
 ●いかにヒドイかを見せることが一番(例:会社の工場で使っている424種類の手袋を重役室で示し、  共通化・一括購入の必要性を示し、経費削減につなげた)。
 ●変革を最初からつまずかせる現状満足や、不安、怒りを抑える。

第二段階 ・・・変革推進チームをつくる

 ●変革を主導できるだけの適性(信頼、スキル、人脈、評判など)と権限を備えた適切な人材を集め   る。
 ●失敗する例では、誰も主導しなかったり、行動しない委員会、複雑な管理体制などが障害に。
 ●互いが信頼しあい、結束して行動できるようにする。中に不適切な人がいたら外す度胸も必要。

第三段階 ・・・適切なビジョンをつくる

 ●分析と財務を柱とする計画予算ではない。「わくわく」するような・・・しかし実現可能なもの。
 ●重要なのは・・・「感じ 変化する」行動につなげられること ・・・簡潔で明快なこと。
       「1分で話せる ; 1枚の紙で示せる」ようなビジョン
 ●それを実現するための「大胆な戦略」を描けるようにする。
 ●変革のビジョンつくりに行き詰ったら・・・5年後の姿を思い描いてみる・・・Fortun誌風に
  組織はどう変わっているか;顧客は会社をどう見ているか;従業員は会社をどう見ているか;関連す  る指標はどのようななっているか。

第四段階 ・・・変革のビジョンを周知徹底する

 ●変革によって何を目指すのか、明確で確信が持て、しかも心に響くメッセージを伝える。
 ●言葉で示し、行動で示し、情報技術を活用するなどして、伝達し、混乱や不信を取り除く。
 ●繰り返し、くどく・・・シンボルなどを多用するのも一考・・・とにかく納得、賛同してもらうこと。

第五段階 ・・・従業員の自発的な行動を促す

 ●上からの「命令」「指示」では本当の変革にはならない。従業員自らが「変わる」ことが重要。
 ●そのためには、ビジョンや戦略に心から賛同する人たちの障害なっているものを取り除く。
 ●組織の障害(やる気をなくさせる「上司」の存在、不適切な業績評価など)。
 ●心の障害(行動変化への恐れ、不慣れ、それに伴う評価低下への恐れなど)。

第六段階 ・・・短期的な成果を生む

 ●短期間で成果を上げて、皮肉や悲観論、懐疑的見方を封じ込める。これで変革に勢いがつく。
 ●目に見える成果、明確な成果、心に訴える成果を生むよう心がける。
 ●早期に達成できるテーマを最優先し、成果をできるだけ多くの人の目にふれるようにする。
 ●変革がうまくいかないのは、自分たちが賢明でないとか、管理されすぎているとか、無感動だか    ら・・・ということではない。変革に成功した経験がないだけ・・・という自信をもたせよう。
 ●経験がないから、悲観的になったり、恐怖を感じたり、確信を持って行動しなくなる。
 ●もっと悪いのは、効果のない行動をとるだけでなく、試そうともしなくなる、ことである。

第七段階 ・・・さらに変革を進める

 ●ビジョンが実現するまで、変革の波を次々と起こす。危機意識の低下を容認しない。
 ●多くのテーマを一度に進めてはならない。厳格な「計画」をたてて進めるより「柔軟に対応」。
 ●手に負えそうもないテーマに「あえて挑戦」。

第八段階 ・・・変革を根付かせる

 ●変革の手を緩めてはならない・・・すぐにも”現状満足”が復活する・・・人とは脆いものである。
 ●行動を企業文化に根付かせることによって、伝統の力で過去に引き戻されるのを防ぐ。
 ●そのためには、研修や昇進人事、感情の力を利用して、集団の規範や価値観を強化する。
 ●とにかく、二~三人のヒーローでことが進む時代ではないのだ。

 「好況よし 不況更によし」とは松下幸之助氏の名言である。この苦境下、小手先の対応ではなく、真の変革を断行し、体質をさらに強化する日本企業が多発することが、期待される。
                                               

« 3. 中華料理の楽しみ方(その1) | ブログトップ | パンドラの箱は開いてしまった? »

 
Powered by Movable Type 3.36